龍のお軸を描いた日、わりあい涼しかった。
室内はヒンヤリしていたので、エアコンをかけずに仕事を始めた。
墨をすって絵を描く日は、できることならエアコンなしが良い。
水分が蒸発しにくい環境であって欲しいからだ。
午前9時からはじめ、途中昼食・休憩もとって、描き終わったのは3時ごろか。
疲れたア、とソファに倒れ込みたいところだったが、ちゃんと後片付けをして。
なんとなく体が熱い。
ひたいに手をやると、熱っぽい。
ワッ、疲れて発熱したンだ、と慌てて体温計を出す。
35.8度。
なんだ、熱ないじゃないかと思ったとたん、気がついた。
エアコンを入れていない!
慌ててリビングの強力な方をON。
急激に涼しくなる室内、体のほてりがスッと消えた。
無我夢中というのは、このことなのかもしれない。
その夜、けっこうグッスリ眠ったみたいだったが、「寒っ」と目が覚めた。
娘は暑いかもしれないが、スイッチを切って、また寝た。
翌日、「ベッドもとに戻すから手伝って」
厚焼き卵と呼んでいるマットは、夏の間取り除く。
それをまた元に戻す作業。
「大邸宅の住人だったとしたら、夏の部屋、冬の部屋って作る?」
「う〜ん、それいいね」
「でも夏の間は避暑地でホテル住まいってのが、もっといいかも」
「ああ、その方が良いやろね、大富豪になった時考えるワ」
などと言いながら、ベッドに敷かれたシーツをみてエーーッと驚く娘。
数えたら13枚あった。
なんで?と言うなかれ。
これくらい敷いてちょうどいいのだ、硬さが。
十二単通り越してミルフィーユやなあ、と娘が呟いている。
(玉麗)