りんごの木は毎日見ている。
しかし、見ている部分は成っている青りんごだけであった。
そのすぐ横の葉陰で、泥の建造物の構築が進んでいたなんて、ユメユメ知らぬことであった。
7〜8年も前だろうか。
いやもっと以前のことのようにも思う。
ベランダのコンクリートの手すりの角に、トックリバチが巣を作った。
私は刺される危険を回避するため、それを壊した。
カナヅチでコンコンしないととれないほど、堅固なものであった。
今から思えば気の毒なことをしたと思う。
トックリバチは人間に害を与えないことを知らなかったのだ。
今ならスマホでチョイチョイと(娘が調べる)その情報を知ることが可能だが、当時の私は、トックリ型の巣から何匹かのハチが出現して、ひょっとしたら洗濯物にくっ付き、危害を与えるかもと思っていた。
スズメバチを連想したのかもしれない。
いや以前ミツバチに追っかけられた恐怖のトラウマからかも。
トックリバチの巣が目に止まったのは、トックリバチがいたからだ。
巣の上に止まって作業をしていた。
私は邪魔をしないよう、そうっとそこを離れた。
ミツバチのように追っかけては来なかった。
娘にその旨話すと、キケンじゃないの?と言う。
そこで彼女がスマホを利用した。
「前はカナヅチで壊したけどナア。
あの時はお母さんも若かったし、元気だった。
今、なんとなくそんなことしたら可哀想な気がするねん」
トックリ型の巣の中には、他の虫の幼虫が入っており、トックリバチの子はそれを食べて成長するのだとか。
1匹に1戸の家(?)贅沢やなあ。
覗けるものなら中の様子を知りたいと思うが、いやいや縁あって(?)ここに住み着いたのだ。
成長して飛び立つまでそっとしておいてやろう。
(玉麗)