30年と玉子

この地へ来てもう30年近い年月が経った。
生まれたばかりの赤ちゃんが30歳を迎える。

早ければその子にまた赤ちゃんが産まれ、ひょっとしたら3歳になっているかもしれない。
30年はそれほど長い月日なのに、過ぎてしまえばほんの少し前のことのようにも思えてくる。

久しぶりに電車に乗った。
駅の近辺はいつの間にか風景が変化している。
おしゃれな家が建ち、古いビルはスッキリしたマンションに生まれ変わった。

私が初めて降り立った時の駅近辺の雰囲気は、もうどこを探しても無くなっている。

30年の時の流れが、古いものを全て押し除けてしまったようだ。
この30年間が、町が生まれ変わる節目に当たっていたのだろう。

JR環状線の京橋駅に用があって訪れた帰り、京阪モールの地下食品売り場へ立ち寄った。
この駅を利用することはほぼない。

ちょうど玉子屋さんが、新鮮な大きな玉子を並べて売っていた。
滅多に来ないのにその日に当たったようで、ラッキーと思いながら6個のパックを買った。
そのほか近所では売っていないようなものを探し、買い物かごに入れる。

帰宅は1時過ぎであった。
お腹が空いている。

私はごはんをチンし、80グラムはありそうな卵の黄身だけをアツアツの上に乗せた。
こんもりしている黄身の真ん中に穴を空けて醤油をタラリ。

お箸で崩しながら口の中へ。
思わずニンマリしてしまうこの瞬間。

美味しいものを味わう喜びだけではない何かが、玉子かけご飯には潜んでいるような気がする。

産み落とされて2日以内の卵に限り与えられる賞賛を、送りたい。

(玉麗)

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