新聞を朝・夕読む。
時間のない時は、仕事が終ってホッと一息、夕食の準備をするまでの間に目を通す。
大きな題字を 拾い読みしたり、関心のある記事だけ読む。目が疲れる ので、全部の記事を読み通すことは出来なくなった。
「さくらももいちご」が徳島産だったと、今日の新聞で知った。
「サナゴウチ」と読む地名の、私の生まれた所からはかなり離れた村の名産品として紹介されていた。
住んでいた頃行ったことのない村は、今や最高級品のいちごを産出する場所になっていた。
子供の頃、隣の町や村へ移動する手段は自転車かバスであった。
自家用車などあってもポンコツの荷物用で、オートバイに乗った人はけっこういたかもしれない。
遠くへ行く必要を感じなかった時代であった。
サナゴウチと言う地名は知っていたが、どこにあるのかまでは知らなかった。
父はその頃250ccぐらいのオートバイに乗っていた。
私が18才になって免許を取ると、すぐ車を買ってくれた。
トヨタのパブリカ。
360ccのかわいい車であった。
けれどもその後しばらくして、オートバイをやめてパブリカに乗って通勤するようになったため、私はこの車に乗る機会がほとんどなくなってしまった。
私の専用車は、カブと呼ばれる中古の50ccに格下げされた。
カブで遠くへは行けない。
さくらももいちごもその頃はなかった。
斯くして、私とサナゴウチは結びつかなかったのだ。
と言っても、初せりで1パック16万円もの値の付くいちごは、とうてい私の口には入らない。
残念ながら今も味わっていない。
佐那河内村(サナゴウチムラ)は物語の中の場所のように、実体験が伴わないまま今に至っている。
(玉麗)