玉麗のお話「テラとムン ⑥桜を見上げると・・・・・」

「テラさん、今年も花見出来て良かったナア」

「そやね、ムンちゃんは
今までに行ったとこでどこが一番良かった?」

「うーん、そうやねェ、むずかしいナァ」

「そういう場合な、
“何処もそれなりに”
って答えるねン」

「それってどこかで聞いたセリフやネ」

「ハハ、ローマの休日やんか、
オードリーヘップバーンの王女さまが、
新聞記者に “どこが一番良かったか聞かれて、
いずこもそれなりに、って答えなアカンのに
ローマですって訂正するシーン」

「そやった!
あの映画何べん見てもええナァ」

「私にも聞いてェな、
お花見はどちらがよろしゅうございましたか、って」

「フフ、どなたと行かれた所が?
って聞いて欲しのン?」

「いや、マア、それなりに・・・
いやいや、1人花見っていうのんも
なかなかエエもんよ」

「なんかうまいことはぐらかしてるけど、
テラさん1人で花見に行ったりするの?」

「実はナ、去年から行ってるねン、1人で。
友達とも行くよ、
今日はムンちゃんと来たし。
けど、桜の時期に1回だけ1人で行くねン。
なるべく人のいてへん時間に」

「朝早う行くとか?」

「うん、去年は良かったなア。
空はうすいブルーやった。
桜がちょうど満開で、感動した」

「涙が出そうなくらいキレイやったとか・・・」

「キレイやったわ、
あんまりキレイだったンで、しばらく見上げてた」

「今年の桜はまだ7分咲きやねェ」

「でも今年は見上げんことにした」

「なんで?」

「2日後に首、痛うなってん」

(玉麗)

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