マルコ(カエル)とスリム(カエル)を同じ部屋に入れていた。
マルコがスリムのハウスへ入ってスリムを踏んづけ、踏まれた方はク・ク・クと鳴いて私たちを呼ぶ。
その回数と時間帯(深夜の時もある)を考えて、2匹の間に仕切板を入れた。
個室の出来上がりである。
これでヤレヤレと思っていたら、ある日スリムが跳び越えた。
ジャンゴ(カエル)に比べて小さく軽いスリムならではの新技。
それも、ハウスの上に登って、そこからどうかして(見ていないのでわからない)隣へ行った様子。
行ったらやっぱり踏んづけられる。
またしてもク・ク・クと訴える。
彼らには持ち上げられない程度の重さの網でフタをしているから、このケースの中から脱走することはできない。
けれども、私が作ったシステムを破る技は、知恵として持っており、時々披露してくれる。
与えられた空間をよしとせず、頭脳と体力を駆使して挑戦する彼らはなかなかのものだ。
「コラ、脱獄者め、顔をよく見せろ」
私の手のひらに乗せられた脱走犯は、不敵にもおちょぼ口で笑っている。
(玉麗)