私はこのマンションでは有名人になっている。
絵を教えている人、いろいろボランティア、特にお花の世話を長い間していたので、名前は知らなくても顔見知りの人は多い。
すれ違う時には挨拶を交わす人もそれなりにいる。
ところが、親しく名前で呼んでくれるのに、私の方は知らないという、ちょっと困ったこともある。
今更聞くのも何かバツが悪くて・・・と今までそのままにしている人が何人かいるはずだ。
明るくて、おしゃれで、とても感じのいいIさん、この方もつい先まで名前がわからなかった。
タバコの煙害のことで話が盛り上がり、一旦エレベーターを降りて続きを話した。
Iさんも隣がタバコをよく吸うらしく、ベランダ側を開けると煙がひどいとのこと。
みんな我慢して生活している。
吸う人は我慢せず、スパスパやっているというのに。
このマンションもやっと、
【ベランダでの喫煙は周囲にご配慮を】
との張り紙を出した。
しかし、それで吸わなくなるなんて、誰も思っちゃいない。
マンションの規約を変えなければ、禁止は出来ないのだ。
それは日本国の憲法を変えるのと同じくらい、難しいことだ。
法廷へ持ち込めば、今の時代煙害は、受けている方が裁判では勝つらしい。
が、同じマンションで、両隣、あるいは上下階でそのような手段に訴えたら、どんな状況になるか、言うまでもない。
Iさんは言った。
「『タバコの煙を吸って分解してくれる機械』ってないのかしらねェ」
私は思い切って言ってみた。
「お名前、忘れてしまって・・・」
Iさんはニッコリ笑って教えてくれた。
(玉麗)