初夏の花を描こうと思い、色々考えてユリに決めた。
ユリと言っても種類が多いが、これは山ユリだろうか。
墨だけで描いたらちょっと寂しい感じがするので、白群でぼかしを入れた。
黒アゲハが飛んでいる。
「ナガサキさん」だ。
ナガサキアゲハは以前、カンキツにくっついてわが家にやって来たことがある。
後ろばねに長い尾がないが、絵にはつけておいた。
長崎から船に乗って、神戸に着いた〜〜
「ナガサキさん」は、船に乗ってやって来たのかもしれない。
九州で育った苗が関西方面で売られることもあるだろう。
山間部で育成されている間に「母ナガサキさん」が産みつけたのだ、きっと。
母の胎内の記憶がチョウにもあるなら、孵化した時、あまりにも騒々しくてびっくりしたことだろう。
都会の、比較的のどかなベランダに移住した後スクスク育ち、立派なナガサキアゲハになって飛び立った。

ナガサキアゲハの幼虫がそうなのか、それともこの子がひどくマジメな性格だったのか、未だ解明されていないことがひとつ。
レモンの葉を食べていた子は食事を終えると、必ず決まった葉に戻る。
そして、食事の時移動する。
また元の位置に戻る。
それを繰り返していた。
おかげで、アレ?どこ行った!と探す手間が省ける優等生であった。
墨で描くと、静謐(せいひつ:静かで安らかなこと)という言葉が、脳裡に浮かぶ絵が出来上がる。
あのアゲハの子孫はこの近辺にいるのだろうか。
(玉麗)