風太がいた頃、私達の散歩道に草は生えていなかった。街路樹の下のシャリンバイの間に生える草は、目立つようになると風太を待たせておいて抜き取る。
風太は又始まったと言わんばかりの顔をするが、リードを引っ張って早く行こうとすることもなく、おとなしく待っていた。
風太が亡くなった後は、その道をほとんど通らない。たまに通ると丈の長い草が堂々と生えている。ほんの少し気になるが、そのまま通り過ぎる。
春と秋には剪定をしているみたいなので、草取りもするが、なんであんなにいい加減な仕事しかしないのだろう。
この春には10メートルあまり残したまま放置された。暑い夏にも負けず、鳥の落とした糞から芽を出した雑木が、すごい勢いで成長した。雨の日など横を通ると、草から雫が垂れて、足許を濡らしてしまうことがある。
今日こそアレを切ってしまおう。剪定バサミ・草取り鎌・手袋を入れた袋を持って、いざ!
草取りの時は、種をくっつけて持って帰らないように、表面がスルッとした上着・パンツ・雨の日用ブーツを着用する。帽子も忘れずに。
では、行って来ます。
エ?どこへ行くの?
草取りです。
と、家を出たが、実際には「草刈り」になった。
(玉麗)