私がカネタタキに興味を持った年の翌年、エエッ!と思うことがあった。
玄関の窓の外側で『リ・リ・リ』と音がする。
よくよく見ると、小さな虫の足の影らしきものが確認できた。
カネタタキって飛べるのン?あの小さな羽根で!
どうやらそうではなくて、よじ登ることが出来ると気が付いた。
上方の樹上から『リ・リ・リ』と聞こえるのは、そういうことなのだ。
窓へもエッチラオッチラ登ってきたとみえる。
「この家の住人、ボクの声を聞きたがっている」
と察したのか?
そして今年、東側のベランダでカネタタキの声、娘は「下で鳴いているのが壁に反響して聞こえているだけ」と言うが、窓辺に近づくとどんなに足音を忍ばせてもピタッと鳴き止む。
「ホラ、そこにいるンだって」
と私は譲らない。
カネタタキの声、イコール『リ・リ・リ』と認識する前の年も、東側のベランダで『リ・リ・リ』を聞いた。
姿を見たくてウズウズしたがどうしても叶わず、4年前にやっと愛しの君の正体を見た。
体長1.5センチほどのスマートな虫である。
羽根は申し訳程度についている。
これをスリ合わせて音を出すのだろうが、この羽根ではたぶん飛ぶことは出来ない。
都会のそこかしこで声を聞く。
樹の上から呼びかけたり、バルコニーでチラッと姿を見せたり、おちゃめなシティボーイと呼んでもおかしくない習性に好感を持っている。
かの虫も、きっと私のことを話のわかるバアサンと慕ってくれているような・・・・・。
そう思うと、虫にも人懐っこいのがいるンダ、と嬉しくなってくる。
(玉麗)