龍に約束

先日のブログに、

「過去に龍を空に放ったことがある」

と書いた。

12年前のことだ。

 

その前の年から何度か墨ライブの機会があって、ホテルのパーティ会場や、屋外に設けられたステージで龍の絵を描いていた。

和紙は6〜8メートルの幅があるのに、当時は1人でこなしていた。

当然のことながら、右に左に走りながら、筆や刷毛を操る。

息切れすることもなく、少しばかり汗をかくぐらいで、けっこうノリノリであったように覚えている。

私はまだ、若く元気であったのだ。

 

12年前の辰年の年賀状はよく覚えている。

初描はつがきの 龍天翔りゅうあまがけよ 和紙出わしいでて」

と俳句めいた言葉を入れて、龍を描いている写真を載せた。

この時の龍にはヒゲを描き忘れている。

次に描いたものには牙を忘れた。

 

ライブの時はとにかく早く描かないと、観客が見疲れる。

遅くとも8分で描き終える龍には、いろいろと忘れものが多い。

見ている人達は誰1人気付きはしないから、あとでこっそり描き足すこともしばしば。

 

天上にヒゲのない若い龍がいたら、きっとその時の大きな目玉の子であろうと思われる。

昨夜の雷の宴には、たぶん神々を乗せてすぐ近くまでやって来ていたに違いない。

ヒゲをつけてやろうにも、ライブ時の絵はすべて廃棄するので、もうその機会が失われてしまった。

ゴメン、私が天上に昇る時はきっと、極上の墨と新しい筆を持って行くからね。

(玉麗)

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