ドキドキする

住宅街脇道から親子連れが出てきた。
私はちょっと離れたスーパーへ行っての帰り。

小雨が降っていた。
お母さんが乳児を抱いて先に歩いている。
後から3歳ぐらいの子が、小さな自転車に乗ってついて行く。

最近の幼児用自転車は3輪車ではない。
ペダルがついていなくて、(あるいはついているが外している状態)乗っている子は、両足を器用に前後させて前進する。
慣れた子はけっこう速く、坂道(下り)になると両足を地面から離してスーッと走っている。

お母さんはゆっくり歩いていたので、私は横を追い越した。
「とても上手やねえ」
と女の子に声をかけると、お母さんは
「褒めてもらってよかったね」
とわが子を振り返る。
女の子と分かったのは、小花のついたレインコートを着ていたから。

するとその子はこう言ったのだ。
「うれしくて、ドキドキした」

レインコートのフードの下でニコニコしながら。
なんて素晴らしい表現だろうか。

「そう、ドキドキしたの」
そう言って、女の子を見ているお母さんも素晴らしい。

私は、虹色の風船がポワンと心の中で膨らんだような、口許が思わずほころんでくるような、しいて言うならポワポワした気分で家路に向かった。

3歳かどうかはわからないが、あんな小さな子がオノマトペを使ったことに小さな感動を覚えて、これはブログにと頭の中でまとめながら、雨の中を歩いた。

(玉麗)

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