セレモニーはいらない

ある会合での話である。
その集まり自体、蔓延防止の昨今のことだ、他に方法はなかったのかと聞いていて思った。

友人の話は続く。

主催者側は、「この建物は換気システムが十分行き届いておりますので、ご心配なく」と言ったそうだ。

それからが長い。

担当者の説明。
館長の挨拶。
と、いずれも要約されたものではなく、長々続く。

窓は開け放されていないのに暖房をかけ、60人余りが集合した室内はムッとしている。
これで換気OKと言えるのか。

あちこちで小声ながら、暑いねェ、とか早く終わってくれたらいいのに・・・と囁かれ始めた。
その時、その会場内に集まった人々の中では若手と思える女性が、ハイッと手を挙げた。

「簡潔に説明をして頂けますか、挨拶はいらないので」

彼女の凛とした声が終わると、年配の男性が「その通り!!挨拶はいらん!」と言って拍手をした。

これがドラマなら、拍手はさざ波のように伝わってゆくところだが、残念ながら、その周辺の人達が、そうやそうや、と口にしただけで終わった。

館長はびっくりしたであろう。
館長の存在意義はこの時のためにあるのに・・・と思ったかどうか。

しかし人々の顔を見ればわかる。
そうか、あまり喋ってはいけないのだ、ぐらいは感じただろう。
「では、手短に・・・」と言った。

以上は、友人が経験した痛快な話である。

聞いていた私は思った。
羊達の群れの中にも、時としてこのように意志のある一頭が生まれるのだと。

コロナオミクロン株の蔓延で、おとなしくしていれば済む、事を荒立ててはいけない、と漫然と考えてきた私達も、次の行動はどうとるべきか、常に選択していかねばならないことを教えてくれた。

「その通り!」と声を上げ、拍手した年配の男性にも大いなる敬意を。

(玉麗)

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