意地悪バアサン・意地悪ジイサンってほんとにいるンだナアと、呆気に取られた今日の出来事。
始発のバスに乗った。
停留所に居た人達は10人ぐらい。
三三五五、全員が席に着いた。
次のバス停で、杖をついた大柄な、あまり年寄り臭くない(この場合おしゃれだとかではなくヨロヨロしていない、の意味)婆さんと、頭髪とヒゲがヤケに黒々とした細身のジイサンが乗車した。
ジイサンは横に長いイスの前で「立って、かわってくれ」と命令した。
そこには上品な老紳士が座っていた。
3人掛けだったのでその横に老婦人が2人。
老紳士はすぐさま立ってバアサンに席を譲った。
杖をついて、黒ヒゲジイよりずっと年上に見えた。
ジイサンは、隣の席の2人にも「かわれ」と言う。
老婦人は気丈にも「私は年寄りだから」と立たなかった。
「のけ、年寄り言うたら、みーんな年寄りや、文句言うな」
老婦人が仕方なく席を空けようとしたら、隣の人がすぐさま腰を掛け、体を斜めにして老婦人にお尻を向けた。
そのまま少しずつ寄って行く。
ヘンタイか、とバスの乗客がチラチラと見る。
老婦人は、思わず「キツイですから寄らないで下さい」と言った。
するとジイサンはヌケヌケと言い放ったのだ。
「キツかったら、立て」
老婦人やヨロけながら立った。
股を広げ、フンぞり返っているジジイ(こう言いたかっただろうナア、あのおばあちゃん)。
その間、ジイサンの隣に座っている大柄バアサンは、まるで“こって牛”のごとく、薄目を開けて夫(だろうナ)の方言を咎めるわけでもなく、知らぬ顔。
私つかまり立ちをしている老紳士に、私の後ろの2人は老婦人達に、それぞれどうぞと席を譲ろうとしたが、イエ大丈夫ですと立っていた。
3つ目でヤサグレ老夫婦は下車した。
老婦人達が3ツ目の駅で2人が下車する時、バスの運転手が言った。
「ご気分を悪くされて、申し訳ありませんでした」
本日の出来事はきっと、居合わせた人々の口からあちこちへ伝わっているに違いない。
(玉麗)