玉麗がブーツを履くための椅子。
カエルの手が彫られた、おもちゃ箱のような椅子、「ブーチェ」。
その横で、私達はタコ焼きを作っている。
焼いているのはもっぱら息子で、女達3人は食べるのに忙しい。
「次、チーズとチョコ、いきます」
タコ焼きだからといって、タコだけを入れるのではない。
「その次は、メープルくるみとチーズお願いしまあす」
実は、味にうるさい私が途中で、おろした山芋と水分を少し足してタコ焼き粉汁を薄めておいた。
味はまろやかになり、焼きあがりがトロッと柔らかくなって、格段に美味しくなったのだ。
そのうちAちゃんと娘が交代で息子を手伝い、アレを入れよう、コレを入れようとチャチャを入れて、タコ焼きパーティは盛り上がった。
息子が言うには、自分ちにある電気タコ焼き機は丸が大きく、1度にたくさん焼ける。
これは小さいけどガスボンベなので焼けるのが早い。
やっぱりガスの方が良いナア、小さいタコ焼きの方が冷めるのが早くて、ひとくちで食べやすい、とのこと。
なるほど。
彼は猫舌なので、あつっと言いながら食べるのが苦手なのだ。
タコ焼きに先立って作っておいたもの。
野菜をいっぱい入れたポテトサラダ、おにぎり。
朝、タコを買いに行った時、揚げたてのヒレカツと鳥天ぷらも買ってきて盛っておいた。
朝食を抜いたという3人と、鳥のように少しずつ食べる私は、それらをお昼ご飯としてお腹に入れた。
タコ焼きを待ってイライラしたり、焼くほうがアセったりしないための作戦は功を奏し、私達は余裕を持って事に当たることが出来たのである。
「チョコレート入れるのん??」
と少々引けていた私も、熱で溶けてトロリとなったチョコ入りタコ焼き(タコは入れずチョコのみ)に思わず、
「ホンマ!美味しいネ」
と言った。
いろいろやってみるものだ。
ブーチェは、玄関で待ってくれている。
私がブーツを履く時を。
(玉麗)