バナナは、どういう訳かそっくり返っている。
くだもの籠に置きにくい形状だからか、吊るして保存する方法を考えた人がいる。
バナナスタンド(というのかどうか知らないが)を通販などで売っていた頃、私はちょっとした関心を持った。
台所のカウンターの上にバナナスタンドを置いて、黄色いバナナを吊るしておく。何となく部屋が明るくなるような気がして、通販の本が届くたび、気になってページをめくった。
ある日ふと気が付いた。バナナスタンドをカウンターに置くと、掃除のたびにどけないといけない。
その時バナナが揺れる。
ユラユラすると、早く熟成するのではないだろうか。
そうか、上から吊るせばいいンだ。
得意の大工仕事で、イメージするバナナ吊りが出来上がった。
田舎の中学校の修学旅行は、関西方面と決まっていた。
私が15歳の頃、バナナはとても高価な果物であった。8ツ上の姉はすでに結婚して、芦屋に嫁いでいた。芦屋といっても商業地域で、高級住宅地ではなかったが。
その姉が、港までバナナを持って、会いに来てくれた。きっとみんなに羨ましがられたことだろうと思うが、そのあたりのことはさっぱり覚えていない。
私が作ったバナナ吊りで、バナナが少し揺れている。ついさっき1本、切り取ったからだ。
揺れるとバナナの熟度が上がる、となぜか思い込んでいる私は、気になって仕方ない。
私は熟れたバナナが好きなのだが、娘はかたい目を好む。
そのまま、止まるまで放置するべきかどうか、さて。
(玉麗)