気温30度を切ると、涼しくもないのに秋風の気配を感じたりする。きっと、ひときわ気の早い秋の虫のせいだ。
もう耳に蝉の声は遠のいて、チ・チ・チ、ジ・ジ・ジとかすかに聞こえる声を捕らえようとしている。
私の好きなカネタタキの鳴き声がする。この虫は木にも登る。ベランダにも来る。地面の草陰にいるとばかり思っていたが、間違いだった。
あの小さな体でけっこう力強く音を出す。私の耳には、リ・リ・リ・リと聞こえるのだけれど、カネタタキと呼ばれるくらいだから、金属的な音なのだろう。
本格的に響いてくるのはもう少し暑さがおさまってから。今年も楽しみなことだ。
陽が陰った午後、挿し木をしておいた菊とルリマツリを植え替えた。いつ芽が出たのかオキナワスズメウリが2本、本葉を出している。
私が作った発砲スチロールの苗床は、いろんなものが芽を出す。いろんな種をチョイと埋めるからだ。育つものもあれば、すぐダメになるのもある。
オキナワスズメウリはもう絶えたと思っていたが、しっかり引き継ぎがあったらしい。春に出た芽は、キュウリの枝に取り付いて元気いっぱい。しかし、なかなか花は咲かない。
土をいじるとベランダの床が汚れる。土いじりのあとは掃除機をかけるて雑巾で拭く。
ベランダでカネタタキが鳴いた年があった。下から登ってきたのか、土に卵がついていて生まれたのか。
私は毎夜、彼(?)が出すリ・リ・リ・リの音を、もっとも近くで聞こうと忍び足で窓辺に近づく。するとピタッと音は止まる。離れてしばらくするとまた、リ・リ・リ・リ。そうやって、季節がゆっくり動いて行く。
(玉麗)