1ミリほどの黒虫を5匹見つけて保護下に置いた。
私たちが食べたミカンの種を土に埋めて置いたら、芽が出て、その10センチにも満たない小さな木5本にアゲハは卵を産んだのだ。
ほとんど食べ尽くした頃ようやくグリン(青虫)になって、室内に入れた。
自然の中では1パーセントも羽化できない彼ら。
外に置くと蜂や鳥に捕食される。
グリンになるとモリモリ葉を食べる。
仕方ない、私が大切に育てている日向夏の新芽を与えようか。
彼ら5レンジャーは、きっと美味しいであろうみかんの貴婦人の葉を食べて成長し、やがて前蛹(ぜんよう)から蛹(さなぎ)になった。
そして10日後、羽化の日がやってきた。
私たちが目覚めるより早く羽化し、娘が考案した『ブラ下がり足場システム』で羽根を乾かしていた。
充分乾いた頃、娘は両手で包み、呪文のように唱える。
「雨に気をつけて、また帰っておいで」
ベランダの花の上にそろりと置くと、数回羽根を広げたり閉じたりして飛び立つ。
私たちの視界を数回ヒラヒラと飛び回り、やがて広い緑の中へ。
アリガトウと言っているように思えてならない。
「彼女達」であれば、きっと帰ってくる。
「彼ら」であっても、このベランダからチョウが放たれるのを知っているかのように、飛来する。
アゲハは、自分達が育った柑橘の木がここにあることを知っているのだ。
(玉麗)