街中の樹々も少しずつ色づく季節になった。
イチョウが日増しに黄色くなり、アメリカンハナミズキの葉は紅くなった。
ケヤキの小さな葉が梢に黄色をうっすらと加えている。
が、ドウダンツツジはまだ赤味をささず、じっとその時が来るのを待っている。
地上に近い所にもハッとするような赤や朱が見える。
草紅葉(くさもみじ)、俳句の季語は森羅万象をスイと捉えて表現し、多くを語らなくても情景が目に浮かぶように選ばれている。
私達が描いている絵、特に水墨画には色を排したテクニック、つまり多くを語らない技法がある。
俳画というジャンルもあるが、いずれも細かく描きこまない点で共通するところはある。
色紙手本に朝から取り組んでいた私の目が、何かチラチラと動くものを捉えた。
ベランダから差し込む光の中に出来た影がホバリングしている。
アゲハだった。
それも大きな立派な羽をしきりに動かせてルリマツリの花の蜜を吸っている。
きっと近所のカンキツの葉をモリモリ食べて大きくなったグリンが、どこかで羽化したのだろう。(※グリン:アゲハ蝶の幼虫)
チョウのために買ってきた花だ。
もうあまり多くはないが、あの子のお腹を満たすくらいはたぶんある。
まだ寒くはないから、毎日通って蜜を吸ったらいい。
猫 そこにいて耳動く 草紅葉(高浜虚子)
私が今日描いた猫は、菜の花の側に居て、飛んで来たチョウを見ている。
来春の手本になる予定。
(玉麗)