リヒテンシュタインの名は、私が勝手につけたものだ。
昨年、10月か11月に朱赤のゼラニュームを手に入れた。
3株は鉢の中でどんどん大きくなり、次々に花をつけた。
その頃、アベノハルカスで美術展を催しており、タイトルが「リヒテンシュタイン家の秘宝展」(秘宝ではなかったかもしれない)で大きなバラの花を描いた絵が、新聞に載っていた。
わが家のゼラニュームはますます豪華を誇り、両手に余るほどの株が見事に咲いていた。
その様子がまさにリヒテンシュタインと呼びたくなる種であった。
以後、そのように呼んでいる。
下の植栽の間にハゲハゲの部分が出来たので、そこへ移植した。
地に下りた彼の花は勢いを盛り返し、雨の頃少しショボクレていたものの、涼しくなって再び咲き出した。
しかし撤去せよとのことで、抜いた。
咲いていた花を切り花にしている。
貴族の深窓の夫人を思わせるその色は、今も変わりなく鮮やかな朱赤で、ベルベットのような深みのある艶を纏っている。
ゼラニュームは散る時パラパラと飛び散るが、このリヒテン婦人はそうならないのも良い。
1年間咲き続けた花、ルリマツリよりさらに優秀である。
ありがとう、元気な色で道往く人をなぐさめてくれて。
(玉麗)