思い出の道を歩く1/2

ある日の朝、私はそこそこ元気であった。

ひょっとして歩いて行けるかもしれない。
その日はバスに乗って出かける用があった。

1時間ぐらいかかるかもしれないけれど、天気が良いから暑いかもしれないけれど、途中で諦めるかもしれないけれど・・・・・。
行ってみよう。

幸いなことに風が吹いていた。

暑くなったら木陰で立ち止まり、ベンチで休んだりしながら、ゆっくり歩いた。
犬を散歩させている人と何人もすれ違った。

風太がいた頃、この道をよく通った。

その頃もすれ違ったどの犬よりも、風太は俊敏で、美しかった。

私はひそかに『黒繻子の貴公子』と読んでいた。

飼い主の思いは犬に伝わってゆく。
風太も誇り高く、他の犬が近づいても動じることなく、犬同士の挨拶(体を匂いあう)すらしない。

父犬から受け継いだ正統なハックニー歩様で前足を高く上げて歩く様は、小さいながらもなかなかのものであった。

女の子がお父さんにパンを買ってと言っている。
「お金持ってきてないよ」
お父さんが呟く。

ポケットのスマホを見て、
「ペイペイ534円しか残ってないナア、買えるかナ」
と2人してパン屋へ入って行った。
ここにも風太との思い出が残っている。

おすわりをしておあずけを守っている風太、目の前にちぎったパンが置かれている。
じぃーーとパンを見つめて、「よしっ」の声符が出るのを、今か今かと待っている。

その時、手すりに止まっていたスズメが一羽ピューと下りてきたと思ったら、パンを口にくわえて飛び去った。

「アッ ボクのパン、返せ!」と言ったのだろう。
ワン!
とスズメに向かって吠えたが、すでに遅し。

あ〜〜あ、風太には悪かったけれど、娘と2人で笑ったナア。

その後、ネコのように跳躍して口でキャッチするフリスビーを覚えた。
教えるのがちょっと遅かったネ。

(玉麗)

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