”良い声やねェ”と言うと、“リッリッリッ、リッリッリッ、リッリッリッ”と続けざまに鳴いてくれる。
でもそんなところに入ってたらごはん食べられへんよ。やっぱり出してやらんとアカンねェ。
リビングの真ん中にビニール袋を置いて、“リッリッ”を捕まえることになった。
『ア、ビンの中!』目ざとい娘が早速見つけてくれた。もも・りんごジュース。高級品嗜好やねェ。ビンの中で、1.5センチのカネタタキが触覚をプルプルさせていた。
ビンの口に和紙でフタをして、小さな穴を開けた。“リッリッ”はまたしても捕われの身になった。
もう鳴いてくれない。雨が降るらしいから今放してやったらかわいそうか。いやいや、一刻も早く他の虫達のように自由な身にしてやった方がいい。部屋の中とはいえ、外に出たら、あんなに楽し気に鳴いていたではないか。
ビンを大事に持って外の花壇の前まで行った。雨がしょぼついてきた。寒くないだろうか。一瞬迷ったが、ビンを出やすいよう横にして、人目のつかない植え込みの奥の方へ置いた。
コオロギが鳴いている。カネタタキも。ウチの子、仲間に入れてやってネ。
(玉麗)