見た目で判断するのか、ニオイなのか、彼らの基準はよくわからない。
人間の場合、油と糖分が配合された物は大抵の人が喜ぶ。
カエルも魚の脂肪が混ざったタタキに食欲をそそられるようだ。
いつも赤身の刺身かとり肉を小さく切って与える。
それなりに喜んで食いつくが、先日の様子はいつもと違った。
スプーンに魚のタタキをのせてジャンの目の前に差し出すと、それまでトロンと半睡だった目が真っ黒に輝き、ジャンハウスの床を蹴るようにして外に出てきた。
パクッとひとくち、次ちょうだい!と催促して娘の方を見上げている。
「スゴイね、ジャン君、おいしいの!?」
とスプーンを出すと、またしても瞬時にパクッ!
合わせて巨峰(ぶどう)1コ分くらいの量を食べた。
次はマルコ、いつもなら仕方なく食べている態なのに、パクッ!パクッ!
スリムに至っては、初めての反応、与えている人の方を見上げて次を催促した。
マルコ同様。
食べることに無関心で、よって2匹共ジャンの3分の1くらいしか体重がないヤセガエルである。
実は昨年、マルタ島で養殖されているマグロを食べさせたことがあった。
美味しいが脂が多い。
たくさん食べたジャンはみるみる太った。
それに懲りて、赤身に変えた。
彼らのために買ったタタキを、シソの葉で巻いてワサビ醤油でお相伴した。
カエルといえども、彼らの口は肥えてきたのかもしれない。
(玉麗)