娘の運転歴はけっこう長い。
すぐには思い出せないが、ハラハラ、ドキドキ、ゲラゲラの話はいっぱいある。
私の知らない武勇伝もいくつかあったようで、今日教室で披露した。
教室から爆笑が聞こえた時、お茶の用意をしていた。
免許取りたての頃のこと。
細い道を通っていて、小さな溝に脱輪した。
周りは工場があるだけの寂しい場所で、人っ子1人通っていない。
娘は力自慢であった。この頃の娘を「アトムのいとこ」と言っていたのを思い出す。
頼る人がいないと判断した彼女は、エイヤッと車体を持ち上げた。
側溝から出すと、ウーンショと車を押した。
動き出した車に飛び乗って、たぶんニンマリ笑っただろう。
映画のワンシーンである。
ウソのような話であるが、ホントのことだ。
その頃の軽自動車は軽量だったのかもしれない。
友人から1万円で譲り受けたこのアルトに乗って、アルバイトにも通っていた。
アルバイト先のオニイサン達がポンコツ車を面白がって、塗り替えてやろう、となった時、「ピンクがいい」と言ったらしい。
ピンクの軽自動車はその後けっこう長い間、八尾の街のあちこちに出没していたようだが、私は乗せてもらった記憶が薄い。
この時代の娘の運転能力を信じていなかったのかもしれない。
(玉麗)