ベランダに出て眼下を見ると、白い鳥の群れが木に止まっている。
そう見えるのはハクモクレンの木だ。
数日前には、小さい鳥が体を精一杯ふくらませているかのように見えたものだが。
雨が止むと急激に暖かくなり、鳥達は一斉に飛び立ってしまう。
樹下に行くと、白い花びらがいっぱい落ちているはず。
ハクモクレンは桜と競い合わないようにちゃんと心得ている。
3月下旬、桜の開花ニュースが流れる前にプワプワと咲き、パラリパラリと散ってしまう。
ちょっと小ぶりのコブシの花もアワアワと命短い。
春の花達の、それも木に咲く花の潔さは、きっと日本人の心の奥深くに何かを訴えてきたように思う。
大きく言えば、芸術を育んできたのだ。
郷里の古い家は、裏側が石垣で高くなっていて、何本かの薮椿が自生していた。
いくつの頃かよくは覚えていないが、小学校低学年であったような・・・・・。
その年の椿がひときわ鮮やかな赤であったのが、際立って美しいものを凝視した記憶だけがくっきりと残っている。
玉麗椿の原点はここにあると思ってしまう。
ズキリと心に沁みてくる花である。
(玉麗)