ジャンには得意技がある。
私がちょっかいを出して、右足の指をピョイと触った。
指はとても敏感なところらしい。
触った途端、反対の足を軸にしてピョンと180度向きを変えた。
ヒキガエルは俊敏ではない。
カエルはピョンピョン跳ねるイメージがあるが、彼らはノソノソ歩く。
逃げる時はピョンと飛ぶが、連続は出来ない。
とにかくノソッとしているジャンが、瞬時に向きを変える様子が何ともユーモラスで、私達は大喜びする。
しかし、ジャンにとってはおおいに迷惑、たぶん心拍数も急上昇するのだろう。
何回かやっていると、そのうち動かなくなる。
電池が切れたオモチャのように。
ゴメン、しんどかった?
犬なら怒って噛むかもしれない。
猫ならきっと引っ掻くだろう。
ジャンは何にも言わず、泰然としている。
大物だネ、君は。
鳥のもも肉を小さく切ってスプーンに乗せて与える。
パクッと一口で食べる。
口のフチについたのは、手を使って口の中に押し込む。
歯がないから、間違っても自分の手を噛むことはない。
3匹のうちジャンだけが、ケージの外で豪快に食事をしてくれる。
あとの2匹は、ケージの中のカエルハウスに隠れたまま、半身を出してパクッ。
食べたらすぐ中に引っ込む。
いつからこんな具合になったのか思い出せないが、ジャンだけがとてもよく慣れてきた。
その頃から他の2匹より大きくなって、ついに改名した。
チビからジャンゴに。
ジャンゴになってからさらに風格が備わり、「泰然自若」とはこのことか、と私達を納得されている。
(玉麗)