ヌッちゃんは食パンばかり食べて体に良くない。
野菜も食べないと、常々思っていることを今日実行した。
野性の生きものにエサをやってはいけないことを、知らない訳ではない。
しかしヌッちゃんは、たぶん捨てられた子だ。
川に棲みついて食パンを与える老夫婦のおかげで生きている。
私の心配はひょっとしたら的ハズレだったかもしれない、と今日やっと解った。
食パンで餌付けされたヌートリアは、あまり野菜を好まなかった。
人参、チンゲンサイ、りんご、どれも食べたが、食パンのように喜んで食べている風ではなかった。
横の茂みが、ガサゴソバタバタする。
娘が見に行くと、ハトが釣り糸に足を取られて暴れているらしい。
長い糸が足に絡まって、外れないという。
すぐ上の橋のたもとの交番でハサミを借りてくるから、この糸を持っててと言うので、降りて行った。
コンクリートの杭がある。
この上に糸を置いて石で叩けば切れるはず。
じっとしてるねンで、ハトに言い聞かせ尖った石を探す。
あった。
都合よくスパッと割ったような石が手近にあった。
糸をコンクリートの上に乗せ、石で叩く。
ものの3秒でプチンと切れた。
まだ少し足首に巻き付いているので取ってやろうとすると、バタバタと飛び立った。
あの調子なら大丈夫。
娘に伝えようと道路に上がると、向こうから駆け戻ってきた。
お巡りさんいなかったから、コンビニでハサミ買ってきた、と。
ハトはもう飛んでいったよ。
「ハサミ要るなあ、いろんなシーンで」
彼女はこの次からバッグの中にハサミを忍ばせるつもりかも。
(玉麗)