「キミは優秀だったけどねェ、子供はイマイチなんか?ちっとも出ないよ」
わが家のスティックブロッコリーは、おん年3歳。
つまり3年生きて4年目の冬を迎えようとしている。
その姿はブロッコリーとは思えぬ風格を備え、5ツに枝分かれしたサマは盆栽の体(てい)を成している。
1番高い枝の分岐枝が折れたので、元の形にしてセロテープで繋いでおいた。
なんとその枝は復活して、グインと曲がったあとまた天に向いた。
驚くべき生命力である。
もはや木となった野菜に向かって前述の言葉をかけたのが、10日程前だったか。
今日水をやろうとしてふとてっぺんを見て驚いた。
「スティックブロッコリーだ!」
こうなるとただのブロッコリーではない。
敬意を込めて「サー・ブロッコリー」と呼ばねばと思ってしまう。
先端に立つ2ツの花蕾を恭しくハサミで切り取り、食用にすべく台所へ運んだ。
「サー・ブロッコリー」は、と書いてちょっと長ったらしいナ、と考えなおす。
「サブロー」に変えてもよろしいか、とは相談しなかったが、以後そう呼ぶことにした。
「サブロー」は3年の間私たちの食卓を潤してくれた。
昨年末の花蕾を5〜6本採らずに放置し、作るまで待った。
カサカサになったところで鉢の土にしごいて蒔いた。
種は100パーセント近く発芽し、ブロッコリースプラウトを賞味した。
何本か残しておいたら8本が成長し、5本を息子の庭へ、3本を我が家においた。
立派なブロッコリーになっている。
けれどもブロッコリーと呼ぶのは花蕾の部分、我が家のソレは今だ見当たらない。
親の「サブロー」は4シーズン目も健在だというのに。
いや、子は奥手なのかもしれない。
もっと寒くなったら、ひょっとしてスティックならぬ森のごとき蕾をつけるやもしれぬ。
(玉麗)