木の種類をよく見分けられない園芸業者だっていると思う。
ましてやアルバイト的に集められた若い子に、大事な木を切られたら、どう言えばよいのか。
当時植栽委員だった私は、諦める道を選んだ。多分それ以外考えられなかったのだと思う。
その木が2年後に芽を出し、さらに3回春を迎えた今年、何気なく見てびっくりした。
蕾をつけていたのだ。
サツキが伸び放題になって劣悪な場所なのに、ひょろりと伸びたその木は、白い花を今日明日にも咲かせようとしている。
バイカウツギ。
緑の中でひときわ映えるその花を見た日、こんな花があるんだと、図鑑で調べた。もう20年以上前、ここへ来た次の春のことだった。
毎年たくさんの花を咲かせ、芳香を放って魅了してくれたのに、切られた時のショックは言い難い。
3日前に見つけたその木に、「バイカウツギ(切らないように)」と書いた札を吊るしておいた。
これでもし切ったら、今度は許さないゾ。
花や木は大切に育てると、期待に応えてくれる。
バイカウツギは切られたと思って諦めていたが、懸命に生きて芽を出し、花を咲かせるまでに育ってくれた。
思いが通じたみたいで、とても嬉しい。
(玉麗)