長雨で空のゴミが一掃されたのだろう。
視力の弱い私の目にも星が見える。
月が美しい。
と言っても、1コの星は5コぐらいに散りばめられたように見えるし、月も当然何個かダブって浮いている。
雲の少ない今夜は、夜の闇が薄く、墨ではなく藍色をぼかしたみたいに見える。
虫達はこの涼しさをすっかり秋だと勘違いしているようだ。
昨夜よりも鳴いている虫の種類が明らかに増えている。
耳を澄ますと、リ・リ・リと聞こえる。
カネタタキだろうか。
ずいぶん遠慮がちに声を出している。
『もう秋?なんか違うような気がするけど』
と疑り深く・・・・・。
炎帝のいない夜は雲が切れても湿度の上昇はない。
昼間降った雨が夜露と一緒になって、大気を涼気で満たしている。
これはまさしく初秋の冷気だ。
あと2日、この穏やかさが続くだろうか。
8月もまだ半ば過ぎなのに、こんな涼しい夜が続くなんて信じられないことだ。
もう秋だと思ってしまうのは、虫達ばかりではない。
(玉麗)