セミしぐれがピタッと聞こえなくなってきた。
代わって、秋の虫たちが鳴き出した。
数種はわかるが、声だけで姿を想像するのは難しい。
何年か前にカネタタキと遭遇し、わが家のベランダでひと夏(終わりの頃だったが)過ごしてくれたのは感動であった。
もう、かの虫はあちこちで、リ・リ・リと音を出している。
この虫は草むらはもちろん。木の上にも登るし、ベランダにもたまに来てくれる。
けれどもよほどの幸運でもない限り、その姿を見ることは出来ない。
小さな虫で、羽も短いから飛ぶことはないのだろう。
木や壁を伝ってやって来ることを知り、ますます好きになった。
植え込みのそばを通る時、声がすると、私に呼びかけてくれている気がする。
虫だって人間のエリ好みはあるだろう。
このヒト、ボク達のこと好きみたいと感じたら、そっと近づいても声をひそめることなく、友好的に美声を聞かせてくれる。
そう思いたくなるような出来事が、かつてあった。
いつの間にか室内に入ってきたカネタタキが、1週間ほどわが家に滞在したことがある。
私のベッドの上までやってきて、リ・リ・リと鳴いてくれた。
でも家の中に彼らの食料はないだろうと思い、苦心の末捕まえて外に出してやった。
あの子の子孫が今もこの辺にいて、私に声かけをしてくれていると思えてならない。
リ・リ・リを耳にすると、あ、元気にしてる?と思わず近づいてしまう。
笑むように スリム旅立つ 夏果てぬ
スリムが6年4カ月の命を全うして、今朝、風太のいる天空へ跳んでいった。
いつも笑っているような口元のスリム。
私達を幸せにしてくれて、ありがとう。
(玉麗)