八月尽

セミしぐれがピタッと聞こえなくなってきた。

代わって、秋の虫たちが鳴き出した。

数種はわかるが、声だけで姿を想像するのは難しい。

何年か前にカネタタキと遭遇し、わが家のベランダでひと夏(終わりの頃だったが)過ごしてくれたのは感動であった。

もう、かの虫はあちこちで、リ・リ・リと音を出している。

この虫は草むらはもちろん。木の上にも登るし、ベランダにもたまに来てくれる。

けれどもよほどの幸運でもない限り、その姿を見ることは出来ない。

小さな虫で、羽も短いから飛ぶことはないのだろう。

木や壁を伝ってやって来ることを知り、ますます好きになった。

植え込みのそばを通る時、声がすると、私に呼びかけてくれている気がする。

虫だって人間のエリ好みはあるだろう。

このヒト、ボク達のこと好きみたいと感じたら、そっと近づいても声をひそめることなく、友好的に美声を聞かせてくれる。

そう思いたくなるような出来事が、かつてあった。

いつの間にか室内に入ってきたカネタタキが、1週間ほどわが家に滞在したことがある。

私のベッドの上までやってきて、リ・リ・リと鳴いてくれた。

でも家の中に彼らの食料はないだろうと思い、苦心の末捕まえて外に出してやった。

あの子の子孫が今もこの辺にいて、私に声かけをしてくれていると思えてならない。

リ・リ・リを耳にすると、あ、元気にしてる?と思わず近づいてしまう。

0歳のスリム・・こんなにちっこい!

 

笑むように  スリム旅立つ  夏果てぬ

スリムが6年4カ月の命を全うして、今朝、風太のいる天空へ跳んでいった。

いつも笑っているような口元のスリム。

私達を幸せにしてくれて、ありがとう。

(玉麗)

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