風の日

毎日風が吹く。もう3日も続いている。

薫風にはほど遠い突風である。

大気がどこかで力を溜めて一気に吹いてくるから、けっこうな力である。侮っていたら、大きな鉢が2ツ、また1ツ、ベランダの鉢台の上から落下した。

慌てて起こしたが、その辺は土だらけ。陸上でこれだけ吹いていたら、海上はかなりの波だろう。

 

私が若い頃、郷里への交通は、和歌山の突端からフェリーで海を渡る方法を選んでいた。

その他にもあったのだろうが、これが一番船上での滞在時間が少なかったからだ。

それでも毎回ヘロンヘロンに船酔いして、海が荒れている日など、私は半分死んでいた。

半分生きていたのは、まだ小さかった娘と息子を連れての旅だったからだろう。

母親が半死状態の横で、息子はおとなしくしていたが、娘は船室をウロウロして乗客に愛想を振りまいてお菓子をもらったりしていた。

実家の近所の娘さんが、「あんな可愛い子供は見たことがない」と会う人ごとに告げたという愛嬌ものだったので。

 

なぜか帰路は風の日が多かった。

和歌山に着くと、半死状態の母親はキッと全身の力を振り絞り、息子をおんぶして娘の手を引き、荷物を持ってわれ先にと走る人の群れに遅れじとばかり加わる。

ここからは電車の旅なのだ。指定席なんてなかったんだろうナァ。

一日中吹く風をリビングから眺めていると、何十年も前のことが目に浮かぶ。

(玉麗)

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