カエル先生

いつも行く花屋に5カ月ほど前からワンコがいる。

チワワと何かのミックスらしく、ブラック&クリーム、なかなか可愛い男の子だ。

来たばかりの頃は、誰にでもシッポを振る人懐こい犬だったが、今7カ月、人間で言えば思春期だろうか。
人の好みがハッキリしてきて、気に入らない人には激しく吠えるらしい。

ところが私が行くととても嬉しそうに寄ってきて、顔をなめる。
手を甘噛みする、体をスリ寄せる・・・と、大変な歓迎ぶり。

花屋のお姉さんは
「先生、この子の好きな匂いがするンかなあ」
と不思議がる。

今日散歩がてら、花を見て元気になろうと行ってみた。

「ワンコは?!」

「今、昼寝中」

いろんな花を見て回り、ペチュニアが1本枯れたのを思い出し、3本選んだ。

ケースの中のひまわりが鮮やか、これも買おう。

店主が、「起きたよ」とワンコを連れてきた。
私の顔を見ると「アッ この人ボク好き」とばかりに、しっぽを振る。

「よし、よし、いい子やねェ」

首の周りを掻くように撫でてやる。

そこへ近所の老婦人登場。
お姉さんが小声で言う。
「あの人にいっつも吠えるねン」

ワンコがその人を見る。
小さくウゥと言ったので、
「ア、いい子、いい子」
首輪を左手で持ち、右手で優しく撫で撫で。

するとしっぽを振った。
老婦人おおいに喜び、近寄ってくる。

ヤバイ、怒るなよ、いい子やねェと言いながらもっと撫で撫でした。
怒って噛み付くこともなく、無事。

「今日はよっぽどゴキゲンなンや。いつも怖い顔して吠えるのに」
と老婦人は仏花を手にした。

お姉さん、「この人カエル先生やねン」

エ?マアいいや。
「生きもののニオイがするから安心するンやねェ」
とちょっと意味不明のやりとり。

老婦人、去る。

お姉さん、「ヘエ〜〜、吠えんかったの初めてや、先生スゴイ!」

じゃあ、またねとワンコに手を振ると、店主に抱かれたまま、両手を振って身を乗り出して別れを惜しんでくれた。

いいねェ、好かれるって。

(玉麗)

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