ベランダに出ると、東南のすみが何となく寂しい。
そうだ、先日わが家は年末最大のイベントが催されたのだった。
その日は日曜教室の年内最終日。
「良い年をお迎えください」
日本の好ましい挨拶のひとつを交わしながら全員が帰った後、私達は「先生の顔」をすみやかに外し、本日の集いの主催者兼楽しむ人に早変わり。
椅子を出したり、テーブルの位置を変えたり、食器を並べたり・・・それはそれは忙しい。
ピンポーン。
はあーい。
息子夫婦が両手にいっぱい荷物を持って現れた。
冬至のその日、娘のバースデーとクリスマスを両方一緒に楽しむ日。
早速プレゼント交換が始まった。テーブルに所狭しと並べられた品々。各々に頭をひねって集めたものばかり。



盛り上がったところで、全員がおなか空いたナアと言う。
「じゃあ2人で飲み物買ってきて」娘とヨメさんを送り出す。
息子と私はかねてよりの打ち合わせ通り、ベランダへ。
5年目にしてやっと咲いた皇帝ダリア。これをバッサリ切って用意しておいたかすみ草と一緒に花束にする。娘にはナイショのサプライズプレゼント。
皇帝ダリアは今年3メートルにもなり、愛でられるのは上階の住人のみという状態になっている。てっぺんには花が咲いているように見えるが、逆光で確認はできていない。
ベランダからはみ出しているため、切るには少々危険を伴う。下の方で葉を広げているブロッコリーの鉢はすべて移動しておいた。
息子を危ない目に合わせるわけにはいかない。
下から130センチぐらいのところを切って欲しいと言うと、
「え?そんなに長くていいのン?」
「花のとこだけ切られへんでしょ、高すぎて」
「マァ、そうやナァ」
もうすでに暗くなってきたベランダで母の指示が飛ぶ。
「切ったら、折らんように気ィつけて!!」
「オーケー」
「あーっ 上の方が天井にかかってる!花を散らしたらアカンよっ」
皇帝サマをお迎えするには、最大の配慮が要る。
(玉麗)