大根

久しぶりでT氏にお目にかかった。私の住むマンションには、少なくとも300人ぐらいは同じ敷地に住んでいると推測する。その中で何軒かに友人・知人がおり、T氏とは奥さんと親しいことから、お会いした時は挨拶を交わす間柄である。

そのT氏が、右手に葉付き大根の入ったビニール袋をブラ下げていた。その辺りで買ってきた風ではない。と言って、今畑から抜いてきた、という感じでもない。葉っぱのシンナリ感が、収穫して数時間経過したことを告げていた。

これは、少しばかり遠くから持ち帰ったものに違いない。

大阪の「村」と名の付く唯一の地域に同級生が住んでいて、年に一度親しい友人達でバーベキューパーティを催すそうな。その友人は、大学で難しい学問を研究されている学者だそうで、今年初めて大根作りに挑戦、その成果を同級生達に分配してくれたのだとか。なるほど。

T氏は、「イヤー この大根は解析せんと食えんのちゃうかな、と思ってまんねん」と言ってニマッと笑った。私は「きっと難しい味がするンでしょうね」と返した。

家に帰ってハタと気が付いた。
ああ、そうだ。こう言えばよかったんだ。

「そりゃあもう、懐石料理で決まりです!」

(玉麗)

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