上高地・軽井沢。
5月のある日突然思い出す場所。
清涼な空気、森閑とした樹々の中、緑色の神の湖・・・・・。
ベランダに出た時、その地の空気が肺の中に入ってくる気がする。
けれどもそれは、私が創りあげた桃源郷。
実際のその場所とはかなりの隔たりがある。
上高地の河童橋周辺は人であふれ、軽井沢の湿度の高さに腰痛が発症して、早々に逃げ帰った。
理想郷として想像したイメージの中では、美しいものだけが増殖する。
そして初夏の爽やかな朝、フイに蘇る。
ルリマツリが今期初めての花を咲かせた。
これからずうっと、少し肌寒く感じられる頃まで、次々と開花してベランダをルリ色で彩ってくれる。
今までは春の花が賑やかだった。
ルリマツリの枝の誘引をした頃から、リビングから見る景色が変化した。
赤や黄・オレンジから緑へと。
緑は森を連想する。
そうしてある日、私の憧れの地が現れる。
いずれの地も、もう2度と行くことはない。
行かないからこそ、私の頭の中で存在し続ける。
(玉麗)