「世界で死者2万人超」
などと、新聞紙面ではこれでもかとばかり恐怖の言葉を並べる。
これにビビらない人は肝のすわった人か、新聞を読まない人だろう。怖くないと言えばウソになるが、もうこの年になるとそれも仕方ないと諦観が芽生えるようになる。
死に対してである。
だからもし私が全くのひとり者であれば、ウィルスなんぞそうそう恐れるものではない。しかし家族がいれば、感染すれば必ず迷惑がかかる。それは極力遠ざけておきたい。
きっとほとんどの良識のある人はこう思っているはずだ。
だから、伸びてきた髪をカットするための外出も躊躇する。そんな訳で、1週間ほど迷っていたが、ついに我慢できずに行ってきた。いつもの美容院は千里にある。私の行動範囲(最近の)からかなり遠い所。
乗りたくないメトロに乗って北部方面へ行く。人混みの少しでもマシな時間帯を選んで電車に乗ったら、確かに人は少なかった。
ゴウッと音がするのでよく見ると、窓が少しだけ開いている。アナウンスがあった。密閉度を低くするため、窓の一部を開けているので、手などを出さないようにと。
ナルホド。あちこちで対策は取られているようだ。
デパートやスーパーの入り口にも、消毒用アルコールが鎖付きで置かれている。こんなものまで持ち去るヤカラがいるンだナァ。
帰りに食品を買ったが、あまりアチコチ回らず帰路につく。
わが家に帰って、うがい、手洗い、服などの埃落としをした後、娘とお茶を飲む。
その時、頭の中から緊張が解けた。途端にクラッとめまい。すぐ正常に戻ったものの、たかだか3時間ほどの外出で、こんな事になるとは!
自分の家がこんなにも安堵感に包まれていることを、今さらながらに感じた1日であった。
(玉麗)