積もらない雪

上空は冷たくても、大阪は空気が凍てることがない。
降りかけた雪はすぐ止んだ。

けれどもほどなく、リビングに居る私の目にもそれとわかるくらい、雪まじりの雨となり、また雪となって降り続けている。
積もるほどの勢いはないけれど。

雨嫌いのヒヨはもとより、メジロも集まって木の陰で休んでいるのだろう。

太郎を眠らせ……次郎を眠らせ…と、断片的にしか出てこない詩が、浮かぶ。
誰の作だったか。

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。
(−三好達治「雪」)

現代人は雪が降ったくらいで眠りはしないが、大阪でこのように降るくらいだから、豪雪地帯は大変だろうなと想像する。

しかし、経験のない者が思いを巡らせても行き当たらないことの方が多い。
今日は買物に行かず、あるもので見つくろうことにしよう。

干支お軸の添削をし、教室用バッグにボタンをつけ、これも専ら教室用として使い続けている大きなキャリーバッグのジッパーに蝋を塗った。
少しスムーズになったか。

掃除機をかけようと思ったが、何となく億劫で、そういう時はしない方が良いと判断した。
こんな日は部屋干しの方が洗たく物は乾くので、中に入れた。

リビングのまん中に竿を取り付けられるようにしている。
主婦のアイデアらしいが、これほど重宝するものはない。
第一カッコ悪くないのが素晴しい。カチャと回せばすぐ外れて、スッキリなるのがスゴイ。

来客のない昨今は竿をつけたままにしている。
洗たく物を干すのに、暑さ寒さ知らずである。

明かるくなってきた。
カラスだけは鳴いているが、1羽きりのようだ。

車の音はあいかわらず遠くで聞こえるが、その他の物音のない静かな時間。
積もらない雪がまだ降っている。

(玉麗)

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