私のいつもの通り道に靴修理屋がある。
靴底が擦り減って交換する時に利用するが、
めったに行く処ではない。
久しぶりで行くと女性が応対してくれた。
彼女は受付係だけではなく、修理もしてくれる。
というより、たぶん修理の専門家なのだろう。
テキパキと処理して即修理にかかる。
その動きは一定のリズムがあり、見ていて小気味良い。
“村の鍛冶屋”の童謡を思い出した。
この店は過分の料金を取らない。
ブーツの踵が少し傷んでいるので修理できますかと言うと
踵を巻き直すと1週間ほどお預かりすることになるので、
この程度なら革を引っ張って貼っておきます、とのこと。
その手間賃は取らないのだ。
私の前の女性のハイヒールが出来上がった時も、
“ちょっと打ち付けただけですから料金はいいですよ”
と言っていた。
なんでもかんでも手数料を取るのが当たり前の時代に
なんという良心的な商売をしていることか。
この店は以前、男性ばかり4人ぐらいでやっていたように思う。
今はこの女性と、後方に男性1人。
ひょっとすると御夫婦かもと想像した。
ブーツの靴底取り替えが終わった。
その間5〜6分であったような。
早業である。
「とても手際がいいですね、見ていて感心しました」
と言ったら、
「バタバタしていて申し訳ありません」
と、謙虚な答えが返ってきて、さらに感じ入った。
(玉麗)