最高の麻布(あさぬの)

朝起きあがる時、スルメになったような気分がする。

とにかく、身体中が乾いている。

口の中はカラカラ、目はシパシパ、体が薄っぺらく伸びている。

ベッドから降りるとペラッとしているが硬い体を、ぎこちなく動かせてトイレへ行く。

洗面所で思いっきり顔を洗うとやっと人心地つく。

ああ、この水が冷たい山奥の渓流の水であったなら・・・・・。

 

今日は教室なので、直ちに人間に戻り身の回りのことを整えなければならない。

と言っても、最近2時間緊張を続けるとしばらく使い物にならないこの体。

教室が半分くらい進行した頃にやっとこさ顔を出す。

その時は目をしっかり開き、全身の力で元気を演出する。

皆さん、こんにちは!

 

愛用している夏ぶとんがある。

3〜4枚あるうちの1枚で、このふとんを一番よく使っているように思う。

中に薄い夏ぶとんを入れて麻のカバーをかけている。

この麻が素晴らしい。

 

麻も色々あるようで、これは目の詰まった、表面がスベスベしたもの。

使い込むうちに触感はサラサラになり、触れるとヒンヤリする。

まさに夏の肌掛けに最高のもの。

 

しかし私はこれを通販で手に入れた。

つまりあまり高価なものではない。

30年近く前に。

カバーは何度も洗濯し、あちこち穴が空いた。

けれども決して手放さなかった。

これ以上の肌触りのものが見つかっていないからだ。

 

今日もせっせとつくろいものをした。

麻の繊維は摩耗によって傷みやすく、綿よりも早く破れてしまう。

私が破れるまで使ってきたのはこのカバーだけだ。

麻布は使って育てる、と聞いたことがある。

30年かけて極上の夏ぶとんを作りあげたのだ、と感慨深い。

スルメの体をヒンヤリと包み、しかしエアコンの冷媒共から守ってくれるこの布、たぶんこれからも繕いながら使い続ける。

(玉麗)

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