川にはこっち側とあっち側がある。こっち側に住居がある者は、あまりあっち側を歩かない。部分的にはあっちこっちするのだけれど。例えば河川敷、こっち側に広い整備された場所があったら、そこへ行く。あっち側にもあることさえ知らない。
娘は私以上に好奇心旺盛で、当然ながら機動力もある。食パンを買いに行って、あっち側にも河川敷があるのを見つけた。彼女はとって返して私と風太を誘った。
そこは淀川べりで小さな公園があり、“眼鏡橋”や“残念石”の横を通って河川敷へ下りて行く。人はほとんど通っていない。20本ほどか、桜並木はすでに古木と呼べるほどで、春は花のトンネルになるのだろう。
私達の後をヒョコヒョコ歩いていた風太は、芝生の所になると、前に出た。歩き方もトコトコに変化している。段差があると何度も挑戦する。そのうちヒョイと登れるようになり、二度目には少し先に行ったら段差が少ない所に出ることを覚えた。目が見えないのに果敢に挑む姿は愛おしい。
空は青く高くどこまでも続き、私達は小さな点になったような気がした。
(玉麗)