空が高く感じられる頃になった。
50階はあろうかと思えるビルの上に、群青の空が広がっている。
まごうことなき秋の青。
こんな日は大きく手を振って歩きたくなる。
キャリーを引っ張っているので片方の手しか振れないが、気分は上々。
かたわらの植栽の中からカネタタキに声をかけられた。
「おっ 元気じゃん」
この虫との付き合いは、その姿を見てから一層親しみを増した。
草の上だけでなく木にも登る。
わが家のベランダにもやってきた。
万年筆のペン軸の半分くらいの大きさなので、よほど幸運でない限りお目にかかれない。
その虫と親しく付き合ったことがある。
家の中に入ってきてあちこちで鳴いてくれた。
けれどもエサのない室内では生きていけないだろうと秘策を考え、捕獲し、外の茂みに放してやった。
その年、そこを通るたび、リ・リ・リと鳴いてくれる気がした。
木の上から声が降ってくる。
小さい虫ながらなかなかの行動派である。
甘い水分が好みのようで、果汁100%ジュースでおびき寄せて捕まえた。
その時私の顔を覚えて、「このバアさんはキケンではない」と判断してくれたと思いたい。
虫だって何らかの、仲間との情報交換をしているに違いない。
私が屋外へ出してやったカネタタキが子孫を増やし、彼らの間で玉麗はいい人だと伝達されている・・・・・そんなことを思いながら虫の音を聞くのも一興ではある。
空が青く大気が澄んでいる日は、カネタタキも張り切っている。
(玉麗)

