おいしいものを少しだけ

徳島出身の人たちが、ふるさとの甘いものを思い浮かべる時、まず第一が「ういろ」だと思う。
名古屋の「ういろう」とはたぶん別物と言っていい。

「小男鹿(さおしか)」を挙げる人もいるだろう。
いずれも一級品で、とても美味しい。

ただしお店によって少し味は違うかもしれない。

これらは高額でもある。
それゆえ、口の肥えた人向けの贈答品として扱われる。

「金長まんじゅう」は有名だが、こちらは大衆向け。
価格も安いので味はそれなり。

その他最近になって出現したものは多々あるらしいが、私はよく知らない。

もうひとつ「トラ巻き」というのがあって、私は子供の頃から好きであった。

「ういろ」や「小男鹿」は滅多に口に入るものではない。
家庭用におやつとして買うことはまずなかった。

その点、「トラ巻き」は隣町のお菓子屋で売っていたし、他の2品より安かった。
知人か親戚の誰かが手に入れて持参してくれるのが、何よりの幸せであった気がする。
白あんと小豆あんがあって、私は黒い方が好みだった。

高校生になった時、その店の息子が隣のクラスにいた。
老舗和菓子店の1人息子(だったように思う)は気さくなチャラ男で、私の好みとはほど遠かったが、けっこう面白いことを言っては周囲を沸かせていたように思う。

おとなになって、私の実家の近くに新しい店を出したので帰省の折、「トラ巻」を買いに行った思えがある。
その後、新店が繁盛したのか潰れたのかは知らない。

Uさんが、帰省の折、「小男鹿」を買ってきてくれた。
「あの人にはこれでないと・・・」と思ってくれたのかどうか。
出初めのスダチも一緒に。

このように、ピシッと核心を射る贈り物を届けられる人は、本当に少ない。

Aちゃんは、私が好みがはっきりしているのを知ってくれたようだ。
これが欲しいと伝えると、そう言って頂けるととても助かります、と言ってくれる。

どうせお金を使わせるのであれば、もらって嬉しいものをしっかりと伝えておくこと。
ただ、それが言える相手でないと・・・・・。

先日O先生のお宅へ伺った折、どれが好みかわからないので5種の果物を持参した。
「全部好物です」
O先生は相好を崩して言ってくださった。
よかった。

(玉麗)

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