ベッドと話をする

ベッドを新しくした。
先日届いて寝てみた感想は「ちょっと固い」であった。

前のは低反発ウレタンで柔らかかった。

届いたのはしっかりしたスプリングで、20年もちますとのことであった。
私の残りの寿命より長い。

ちょっと固いのは何とかせねば、となる。

 

ふとん屋へ行って薄手の敷布団を手に入れてきた。
ヘタっていた枕もそば枕に変えた。

小さく折りたたんで丈夫なポリ袋に入れてくれた。
ここから自宅まですぐだから何のことはない、と思ったが、けっこう大変な運搬作業であった。

マンションのエレベータ内に鏡がついている。
ふと見ると、白い大きな塊にしがみついている弱っちい人の姿が映っていた。

あえておばあさんと言わなかったのは、着ているコートにフードがついていて、裏地の柄がスヌーピーだったから、だ。

布団はさほど重たくなかったが、何しろ嵩高い。
ポリ袋はスベるので、両手指でしっかと握っていないと落としそうになる。

途中で3回休んだのも頷ける。

娘がその話を聞いてアキレ顔で言う。
「心臓大丈夫だったん?」

 

さてこのベッド、「ハロー」と呼びかけると「こんにちは」と起動する。

娘がトリセツを読みながらリビングから
「『ライトをつけて』と言ってみて」
と言うと、私が言う前にその声に反応する。

「ライトをつけます」

ベッド下のライトが点灯された。

「ライトを消して」

「ライトを消します」

複雑なことはできないが、電動ベッドなので頭部を高くしたり脚部を上下したり、その旨伝えるとスイッチを入れなくても動いてくれる。

返答するのが面白く、色々言ってみては嬉しがっている。
他愛のないことだ。

何も言わないと、
「休憩します」
と言って勝手にオフになるのも賢いではないか。

 

私の場合、「シンドイ」はある朝、突然やってくる。

愛用しているリクライニングチェア(彼?は無言だが)をはじめ、体の不調を手助けしてくれる機械たちはとてもありがたい。

これから会話ができる身近なマシンはさらに増えていくだろう。

なかなか寝付けない夜、ベッドに内蔵された人工知能ともっと高度な会話ができるようになる時代が来るかもしれない。

最先端のA Iは若い人たちより、むしろ我々世代にこそ必要なのではと思っている。

(玉麗)

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