筆(ふで)
筆は、最も重要な道具です。よく、「書道の筆は使えませんか?」という質問を受けますが、「筆の種類が違うので、使えません」とお答えしています。毛の種類、大きさ、太さなどにより、用途で使い分けねばなりません。
初めての方の筆選びは非常に難しく、どうしても値段が判断基準になってしまいます。“いつまで続けるかわからないし、最初から高価なものはちょっと”という理由で安価な筆を選んでしまいがちです。(もちろん、高ければ良いというものではありませんが)
しかし、初心者だからこそ「道具に助けてもらう」必要もあります。初心者が、安価で粗悪な筆で描くことは困難です。
その悩みを解決する為に、澁谷玉麗は玉麗会発足当時に、オリジナル筆を作りました。(写真左の赤い筆と白い筆)今では会員のほぼ全員が、その筆を使用しており、玉麗も雪も愛用しています。
ふだんのお稽古では、大きな作品を描くことはありませんので、中筆サイズを最低2、3本揃えておけば十分です。筆は、絶対に水につけたままにしないで(毛の根元が痛みます)下さい。
使用後は水でよく洗い、筆先をきれいに整えて、乾燥させた状態で保管して下さい。(筆は使ったあと乾燥させると穂先がふわっと広がりますが、水でぬらすとまたちゃんと揃うので、問題ありません)
また、筆は先がちびて毛が傷んできても、最後までちゃんと使えますので捨てないで下さいね。
とき皿
一番理想なのは、「陶器、真っ白、平ら、直径10センチ以上」のお皿を最低3枚です。プラスチックのものは、墨や絵の具をはじくので使いづらいです。
また梅皿はひと区切りのスペースが小さく、うまく筆でとれないため、おすすめできません。
玉麗流の、墨や絵の具を使った濃淡の美しさを表現するためには、「たかがお皿、されどお皿」。とき皿の上での筆の扱いが非常に重要となります。
顔彩(がんさい)
顔彩の種類もメーカーによって違います。たくさんの色が入っていて安いものをついつい「お徳!」と選びがちです。でも、実際はたくさんある色の中でほとんど同じような色が重なる場合が多いので選ぶ際には注意が必要です。
水入れ
こだわらず安価なものでよいのが、水入れです。陶器製で立派な水入れを使う必要はありません。重たいだけです。でもこれじゃないと絵を描く気分が出ない、という方はもちろん使っていただいて結構です。
軽いプラスチック製のものや、ヨーグルトの空き容器でよいのです。水入れの役割は、中に水をためてそこで筆を洗うことです。小さすぎるものや複雑なかたちのものは、洗いにくく汚れた水をしょっちゅう替えねばならないので、ある程度の大きさのものがよいです。私が教室でよく例えるのは、「水入れは筆のお風呂です。そんな洗い方じゃ、汚れがちゃんと落ちていませんよ」。
下敷き
「真っ白」のフェルト素材であれば、薄めのものでも結構です。書道の下敷きは黒や緑なので、できれば白い下敷きをお使い下さい。黒や緑の下敷きの上に和紙をのせて描くと、水分で下敷きの色が透けてしまい、色の濃淡が確認しづらいからです。
また、おけいこバッグにしまう時、下敷きは絶対に折らずに、筆巻きなどと一緒に丸めて収納して下さい。いったんついた折りジワはとれません。和紙を乗せて描く時に、折りジワの部分で段がついて、非常に描きにくくなります。
タオル
タオルの役割は、水入れで洗った筆の水分をふきとることですので、「水をちゃんと吸う」ことが一番大切です。真新しいもの、洗濯の際に柔軟剤仕上げをしたものは、タオルの表面に膜ができているので、水を吸いにくくなっています。
ティッシュペーパーも代用にはなりません。古いTシャツを切って使っている人もいましたが、生地がつまっていてやはり使いづらいです。レースや刺繍など飾りがついたもの、黒や赤など濃い色のものより、シンプルな白で薄い生地のものがベストです。
もちろん描く絵によっては、タオルをあまり使わない場合もあります。風景画などで筆に水分をたっぷりふくませて描くこともあります。逆に、よく拭き取って筆をカサカサにしてかすれを出すということも。
基本的に玉麗流の絵は繊細な線、濃淡が命。筆をいつもきれいに整えることがとても大切です。ですから、水を吸わないタオルで筆を拭いても、余分な水分が筆に残っていると、バシャバシャになってしまってにじんでしまうし濃淡は出ないし、うまく描けません。
使い古しの、雑巾にするような薄手のタオルが一番よいのです。私が教室でよく例えるのは、「タオルは、筆のバスタオルです。お風呂(水入れ)から出たあと、バシャバシャのままだと気持ちが悪いですよ」。タオルに関しては、非常にうるさい私です。
墨(すみ)
墨は、たこ焼き器ほどではないものの、探せばおうちに1つはあるものかもしれません。ご自身やご家族の方がかつて使われていたものが、どこかにあるかも・・・。
それらの墨で十分です。書道の墨も使えます。大きくわけて墨には、青墨と茶墨があります。どちらが正解というわけではなく、たんに「好み」です。青墨はすっきりとさわやかな感じ、茶墨はあたたかみのある感じで、描くものによって使いわけると印象がガラッとかわるので面白いです。
硯(すずり)
墨をお持ちであれば、硯もきっと一緒に保管されていることでしょう。教室に来る際にできるだけ道具を軽くしたい、と皆さん思われます。硯はとくに道具の中でも重たいです。
小さいものから大きいものまでサイズは色々ありますが、あまりにも小さすぎると、墨がすりにくいです。それに合わせて小さな墨を使うという手もありますが。またプラスチック製の硯はきちんと墨がすれませんので、小さくても石でできた硯をお使い下さい。
(通称)ぼかしブラシとアミ
より作品らしくするために、墨や絵の具を使って、ぼかし(玉麗会での通称です)という作業を施すことがあります。このブラシとアミもいろんな種類がありますが、小さすぎても大きすぎても使いにくいです。
6号サイズくらいがちょうどいいかなと思います。たまに歯ブラシを使う方もいますが、このぼかしという作業はけっこうコツがいるので、歯ブラシではちょっと難しいかもしれません。
まとめ:
道具ごとに、どうやって揃えたら良いか分別してみました。
参考になさってください。
まずは、100円ショップのものやお家にあるもの、安いものでOKの道具。
・フェルト下敷き(白くて半紙サイズくらいのもの、薄くてもOK)
・とき皿(白で平らなもの プラスチックはダメです)
・水入れ(ヨーグルトの器でもOK 軽くて洗いやすいものがベスト)
・ナイロン筆(顔彩が取りやすい 画材屋さんよりDAISOのものが安い)
・筆巻(100円ショップにあるかどうかは??でも安いもので十分です)
・タオル(水をよく吸うもの)
・鉛筆(6Bなど濃いめのもの 下図を描くのに使います)
次に、できれば画材屋さんで選んで欲しいもの。
(あくまでも目安です)
・墨(だいたい2千円くらいのものを選んでみてください)
・硯(石製で、2千円〜5千円くらいでしょうか。プラスチックはダメです)
*硯は、形が滑らかで軽量なものほど高い傾向があります。
・練習紙(書道用の半紙は用途が違うため使いづらいかもしれません。画用紙は水を吸わないのでダメです。画仙紙(がせんし)という種類の和紙が割と安い方です。
・ぼかしブラシ(サイズによりますが、5号で700円くらい)
・ぼかしアミ(プラスチック製で300円から500円くらい、ステンレス製で2千円前後くらい)
最後に、重要な道具です。
・筆(初めは1、2本で十分です。中筆で、3千円まででもけっこうあると思います)
・顔彩(私の実感としては、18色くらいまでで十分です。たくさん入っているとお得感がありますが、結局同じような色がダブっていることが多いので、あまり使いません。価格は、メーカーや種類によって色々ですが、1箱2千円代から4千円代くらいでしょうか)