スフィンクスを見た

あまり外出しないので、ニュースに乏しい。
けれどもひとつ、とても珍しい生きものを見た。

食材を買いに、車で週1回ほど行ってもらう。
近くにペットショップがある。
そこで見たのだ!

スフィンクス、ネコである。

1966年、カナダで突然変異で1匹の無毛のネコが生まれた。
その後異種交配を重ね、短く薄い産毛のネコが生まれることになったが、数はとても少ない。
そのため素晴らしく高価で取引される。

その貴重なネコがペットショップにいたのだ。

産毛は成長するにつれてより薄く、無毛に近い状態になるらしい。
プラスチックの穴あきドームに入れられたその子は、私を見るなりミャアと鳴いた。

「ここから出して、家族にして」
と訴えているようで、胸が痛いほど心掴まれた。

私はどうやらこの手の顔つきに弱いらしい。
お大きな耳、大きな目、スリムで飛躍力のある四肢、小さな頭部。

ネコカタログによると、1度目にしたら忘れられない無毛のネコとある。

その夜、久しぶりで夢を見た。
覚えていたつもりが、目覚めるとスッカリ忘れてしまった。

帰路、
「10歳若かったら、あの子連れて帰っていたかもしれへん」
と言うと、娘が目を丸くした。

私がネコを飼おうかと思うなんて、今まで考えても見なかったことだ。

帰って風太の写真を見て呟く。

「風太に似てる子がいるとかあさんはクラッとするみたいやナァ」

「ボクより美しいいきものなんていないよ」

風太はいつもこう答えるのだ。

(玉麗)

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