小箱の中味 前編

女性には、大切なものを小箱にしまっておく
習慣がある。

その小箱は立派な宝石箱であったり、
お菓子のしゃれた空箱の場合もある。

私はどちらかというと後者の方だが、
ひょんなことから魔法の小箱を
所有することになった。

どこかの企業が何かの記念に
上得意先限定で作った品らしい。

たしか正倉院の宝物を模していると
聞いたが、記憶違いかもしれない。
もう20年も前にもらったものだ。

えんじの塗りに鳥と鹿が貝殻細工で
はめ込まれている装飾性の高いもので、
私はどちらかというと素っ気ないくらい
シンプルなものが好きなので、
あまり好みではなかった。

ところが全面の鍵をはずすと
パカッと2ツに分かれ、
小さな4ツの引出しが現れる構造に
いたく興味を覚えた。

イヤリングを入れる小箱にぴったり。

引出しは7×7センチの正方形で
深さ2センチ。

装飾品はほとんど身につけないが、
イヤリングだけは大好きで、たくさん持っていた。
すべてM製。

このブランドは耳が痛くならない構造の
特許技術を持っており、
当時は人気商品だった。

ホテルで個展を催した折、
宝石店でティアドロップ型の
小さなペンダントトップを見つけた。

個展の前は気分が高揚している。
私はそれを2ツ手に入れた。

Mのイヤリングを持参して、
これに付けて下さいと注文した。
ところが、お店のスタッフはOKと
言ってくれなかった。

仕方ない。
自分で加工しよう。
先の細い工具を買ってきて、
今ついている飾りを取り外し、
ペンダントトップを取り付けた。

上手く出来上がって大満足。
早速個展の初日につけたら、
片方を落としてしまった。

(玉麗)

2件のコメント

  1. きれいな小箱ですね。私も化粧品の入れ物だった金属製のダイヤを散らしたような入れ物なのでアクセサリー入れにしています。やはり大事に残したいですね。

  2. 小箱というものは、なぜか心ときめきますね。私は靴の箱も集めていますがなかなか便利です。(雪)

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