夜の雷

すごい音がした。
ベランダに出ていた私は「ヒャア、こわいーっ」と叫びながら部屋の中へ跳び込んだ。
娘がすぐ側にいなかったので、ハウスの中のジャンに話しかけた。
「こわかったねェ、ジャン」
ジャンは、“ウン”と言って(言わなかったけど) 頷いた。

こんな場合、同意してくれる人がいると心強い。
それがカエルであっても。
私の顔を見ながら“ウン”と言った(言わなかったけど)のだ。
うれしくなって、恐さでドキドキしていた心臓がおとなしくなった。

それにしても、さっきのあの雷は何だったのか。
すさまじい音が空気を破って、その後音は消えた。
稲妻が光っているのみ。
どこか近所に落ちて、それで終りだったのだろうか。

ジャンが、ク・クと鳴いた。
ン?何言うたのと問うても、返事はない。
外は雨が降っている。

明けて今日、朝からまぶしいほど晴天。昨夜は雨が少なかったせいで地表が冷えず、かえって蒸し暑かった。
寝苦しい夜だった。
気温は35度まで上昇するらしいが、明日からは雨マークがずっと 続き32〜33度くらい。
夜が25度に下がると凌ぎやすいのだが。

『9月の雨はシャンパン色』などと気取って詩のようなものを作り、それをもとに絵を描いた。
12カ月の絵、もう20年ほど昔のことだ。
なぜかシリーズ全部が売れて(個展の折)、今手許にあるのは13カ月目の1枚だけ。

夜になって大気が不安定になると又雷が鳴る。
いくつになっても突然の雷鳴は恐い。

(玉麗)

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