裾まわりがナント2m30cmもあるコート、この修理は延べ10時間余りを費やして今、完成した。
出来上がったコートを羽織り鏡の前に立った時、私の脳ミソの中を風が吹き抜け、青空が広がった。
ほんの数秒のことではあったが。
「うわっ、達成感!」
長い時間がかかったのは、ひとえに私の手芸の未熟さゆえである。
しかし、途中で投げ出すことなくようやった、との思いでいっぱいになっている。
毎度のことながら、ミシンが起動させるまでにも時間がかかる。
毎度と書いたが、1年に1回使うか使わないか程度では、使い方を忘れるのも無理はない。
この時点でもうかなり疲れてもいる。
コートの色と合う糸を調達するのにも、手間取った。
このところ手芸屋がバタバタと店仕舞いするのも寂しい限り。
この服を手に入れたキッカケは、試着した私を見てMさんが言った
「うわっすごい似合ってる」
の言葉であった。
その日から、かれこれ1カ月が経っている。
このところ寒波襲来で、冷たい風が吹く日が続いている。
今度彼女と会う日はもう少し暖かくなってからにしよう、この薄手のコートを着て。
手の込んだデザインと格闘したいきさつを聞いてもらうのが楽しみだ。
Uさんにももちろん見てもらおう。
彼女たちは私がフツーの服を着ないことをよく承知している。
そしてもしそれが凝りすぎたデザインだったら、私好みに仕立て直すことも。
それらが出来上がった時必ず、良い出来栄えであること、途中の苦労をねぎらって褒めてくれる。
人生には「良き友」と「褒め言葉」がどれほど重要であるか、私はようく理解しているつもりだ。
コートはハンガーに掛けてしばらくリビングに在ったが、今はクローゼットに大切にしまわれ、出番が来る日を待っている。
(玉麗)