薄手のコートを手に入れた。
昨年のモデルとのことで半額近い値段であった。
しかし何ぶんにも丈が長い。
脇がラウンドしているのも気に入らない。
大がかりな修理はもう体力的に無理だろうと判断して、修理屋へ電話した。
提示された金額は、安いコートなら買えるだろうと思うくらい高かった。
それでもし、すぐに着なくなったら・・・・・。
自分でやるしかないか、やっぱり。
半月以上逡巡して、ある日思い切って裾をチョン切った。
これで決心がついた。
しかしながら、寝込むのだけは絶対に避けたい。
1回目、ここをこうしてこの部分はこんな風にすれば・・・とシミュレーションしていたら、頭が痛くなってきた。
止めよう。
いや中止しよう。
この日、脇のコクーン状態を真っ直ぐにして、仮縫いまではしておいた。
身頃をたっぷり取っているコートの裾回りは2、3mもある。
2回目はそれを仮縫した。
ここからの行程は、
・脇と裾のミシンがけ
・各々の箇所の後処理
・裏地の仮縫とミシンがけ
・裏地と表地を止める作業
などなど、以前の私なら1日でやってしまうことを少なくとも3日はかけるつもりだ。
娘がいたので着てみる?と。
「あ、けっこう可愛いよ」
彼女はいつもシンプルなスタイルである。
私が買ってくるのは、ひとひねりしている服。
それ故、今までしっくり身に着けられなくて、「着る?」と言っても「イイわ」と敬遠していたが、やっと似合う年頃になったのだ。
それなら、とクローゼット・衣装ケースから、あまたの服を取り出して、ファッションショーが始まった。
そのうちの3着を身につけて、今回はレストランで食事をするらしい。
アメリカへ帰る生徒さんが誘ってくれたとのことで、いつものラフなスタイルではちょっと・・・と思ったのだろう。
いま修理中の薄手コート、着なくなっても彼女のために残しておこう。
何しろ今までは、よほど気に入ったものでない限り、すぐ誰かに「もらって」と言ってきた。
母から娘に譲る衣類は、やはり安物では価値がない。
数は少なくても良いものを選びたい、と考えている。
(玉麗)